蘇る美と威厳 州都ラクイラ

200946日未明の震災で大きな被害を受けたアブルッツォ州都ラクイラは震災後10年を過ぎ、修復作業も進んでいます。

歴史的建造物を丁寧に再現しながら、ライフラインをすべて地下にまとめるイタリア国内でも先進的な『スマートシティ』計画への取り組みも進めており、旧市街では店や飲食店など次々オープンしています。

 

キリスト教史上初の『聖なる扉』 

サンタ・マリア・ディ・コッレマッジョ聖堂

 

コッレマッジョ・バスターミナル上方の、白とバラ色の幾何学模様が美しいサンタ・マリア・ディ・コッレマッジョ聖堂も震災で内部が崩壊し、修復に長い年月がかかりました。

聖母マリアのお告げを受けて1287年この教会の建設に取り掛かかった第192代ローマ教皇チェレステイーノ5(ケレスティヌス5)は、1294829日にローマ教皇としてここで戴冠し、聖なる扉(ポルタ・サンタ)を設けて聖年(ジュビレオ)の先駆けと称される免罪の儀式ペルドナンツァを開始しました。

年に1度開かれる側面の扉をくぐった人は誰しも罪を許されるとした赦免の儀式ペルドナンツァは今年724回目となり、ユネスコ無形文化財に登録しようとの声が高まっています。


ドゥオーモ広場とSanta Maria del Suffragio教会

 

奥行きのあるドゥオーモ広場にはよく似た2つの噴水があり、震災前は毎日市場が開かれていました。現在は時期によって市場やイベントなど様々な催しで賑わいを取り戻しつつあり、コッレマッジョ・バスターミナルまで続く地下トンネルも再開しました。

広場の左手にはフランス政府により修復されたサンタ・マリア・デル・スッフラジョ教会(別名アニメ・サンテ教会)が見られます。

ラクイラの教会の中では重大な儀式が分担されており、8月29日のペルドナンツァはコッレマッジョ、イースターはサン・ベルナルディーノ、ここアニメ・サンテでは震災犠牲者のためのミサが夜通し行われます。

復興と協調の象徴

平和の人・シエナの聖ベルナルディーノを祀る

サン・ベルナルディーノ聖堂

 

様式の違った柱からなる3階層に分かれた真っ白なファサードが眩しいサン・ベルナルディーノ聖堂は、1444年ラクイラに着任したフランチェスコ会修道士シエナの聖ベルナルディーノに捧げられたものです。

聖ベルナルディーノは二派に分かれた市民間の争いを仲介するためラクイラに派遣されました。病身だったシエナの聖人は使命を果たす前に没しましたが、その遺骸からは二派が和解するまで血が流れ続けたと言います。その後も諍いが起こるたび棺から血の滴が流れる奇跡が言い伝えられ、生前に使命を果たせずとも死してなお和解をもたらす聖ベルナルディーノは「平和の人」と崇められています。

 

2009年の震災後、国家文化遺産として復興作業が優先され、20155月に再開しました。


フォンターナ・ルミノーザ

(輝く噴水)

 

旧市街の中央通りコルソ・ヴィットリオ・エマヌエーレの突き当たりには、その名の通り日没後色鮮やかにライトアップされるFontana Luminosa輝く噴水が見通せます。噴水中央には二人の女性がコンカ(アブルッツォ独特の水瓶)を頭上に掲げたブロンズ像がそびえ立っています。

スペイン城と音楽ホール

 

フォンターナ・ルミノーザの側にあるスペイン城は、1500年代中期に城主をラクイラ住民たちの攻撃から防御するためスペイン人により建設されました。

スペードを4つ組み合わせたように四方が矢型となった城は堀で囲まれ、石造りの橋は固定されています。

扉がかなり下方にあり、外堀に水が張られたことはないそうです。

このデザインは当時スペインで人気のあったもので、設計者がスペイン国内の城の設計図と取り違えて送ってしまったという説も。

城の入り口手前には、関西国際空港の設計などで知られる建築家レンツォ・ピアノ氏が震災後に手掛けたカラフルな木造の音楽ホールが見られます。


99のまち』ラクイラの社交場だった99噴射口の泉

 

ラクイラは、1200年代シチリア王フェデリーコ2世が周辺の99の集落をまとめて作ったので、99の教会、99の噴水、99の広場があるとの言い伝えがあります。

99の噴水がある場所には当時いくつもの水源から水が流れ込み、ラクイラ(イタリア語の定冠詞"L"を省くと"アクイラ")という名は、鷲(aquila)であるとする説の他に、水(acqua)が語源だとする説もあります。

 

それぞれの集落のための噴射口が1つづつ設置されたと言われる99噴射口の泉では、炊事や洗濯をしに来る人々の社交の場であったようです。

旧市街から少し離れ、鉄道駅から車道に沿って右手に進み、左手のアーチを抜けると右手にあります。

ラクイラ銘菓 トローネ

老舗NurziaはSorelle(姉妹)とFratelli(兄弟)の2社が

 

トローネはヌガーのような甘いお菓子で、クリスマスのお菓子としてイタリアではメジャーですが、ラクイラでは1年中食べられます。

そのラクイラでトローネの老舗と知られるヌルツィアですが、Fratelli Nurziaの直営カフェで聞いたところによると1900年代のお家騒動で2社に分かれたとか。

 

ドゥオーモ広場とVilla Comunaleの間にあるFratelli Nurziaの直営カフェでは、トローネペーストを使ったCaffe' Torroneやトローネのジェラートもあり市内観光中の休憩にぴったりです。

 

一方Sorelle NurziaのトローネはFontana Luminosa近くのカフェなどで売られており、チョコレートコーティングされたものやコーヒー味、ベリー味など様々なフレーバーのトローネが並びます。高級感のある美しいパッケージはお土産にもぴったり。

イースターにはチョコレートエッグも登場しました。